【ファンファン倶楽部第4期】シーズン3- ②③④「やってみる時間をやってみる!」

【ファンファン倶楽部第4期】シーズン3- ②③④「やってみる時間をやってみる!」

ファンファン倶楽部

「安心して”もやもや”しよう」を合言葉に、「ファンタジア!ファンタジア!−生き方がかたちになったまち−」(以下、ファンファン)のコンセプトを共有するコミュニティづくりを目指す企画『ファンファン倶楽部』。

第4期となる今回は、活動期間を3つのシーズンにわけ、徐々に「もやもやを安全に扱う技術」を探っていきます。各シーズンの初回に「もやもやを安全に扱う技術」のヒントを持つ方を、ゲスト(通称「ファンファン先輩」)としてお招きし、「ファンファン先輩」とのワークやディスカッションを受けて、その後の活動で部員それぞれが自分なりの「もやもやを安全に扱う技術」について考えていきます。
このレポートでは11月6日(日)、20日(日)、12月4日(日)の活動の様子をお届けします。

これまでのシーズン1,2,3を通して倶楽部メンバーは、まち歩きを通じて自分の関心の拠り所を確かめたりこれまでの自分のあゆみやその中でうまれた「もやもや」を振り返ったりほかの人と共にファンファンする方法を考えたりしてきました。
そして最後の2回の活動日は、ひとりひとりが“自分なりの「もやもやを安全に扱う技術」”を考え、倶楽部メンバーと共有します。
プレゼンテーションや、ワークショップ、みんなでものを作るなど、自由な形式で共有され、さまざまな技術がうまれました。レポートではその中からいくつかをご紹介します。

ひとりひとりの「もやもやを安全に扱う技術」①
もやもやを振り返るオリジナルワークシート

Sさんが作ったワークシート

こちらは倶楽部メンバーのSさんが作成したワークシート『明日から安心していくもやもや』です。Sさんがあらかじめ印刷した「今もやもやしているコトは?」「そのもやもやはどうなっていて欲しい?」などの質問の答えを書き込みながら、自分のもやもやを整理していきます。「そのもやもやは1年後どうなっている?」などの質問もあり、継続的にもやもやを振り返ることができます。

書き終わった人から可能な範囲で書いたもやもやをお話しし、ほかの部員から質問や意見をもらったりしました。このワークシートは折ると小さなZINEになります。倶楽部シーズン2のゲストでいらしたサトウアヤコさんが、自分の考えを言語化し整理するために「マイクロ・ストーリーズ」というメソッドを生み出したように、Sさんも自身のもやもやを整理するためにオリジナルツールを開発しました。
このZINEをつくるアイデアは、ファンファンの拠点・藝とスタジオにあるリソグラフ印刷機を使ってみたいと思ったところから膨らんでいきました。

ZINEに回答を書き込み、ひとりずつその回答を発表し聞き合いました。

Sさんが旅行で撮ったぺんぎんの写真も入ったかわいいZINEをいただいてわたしは、思考整理に限らず、自分のもやもやを解消するツールが既存のもので見つからなければ、オリジナルツールを気楽に作るのもすてき!と改めて思う体験でした。

ひとりひとりの「もやもやを安全に扱う技術」②
りんごを見て気づく「人それぞれの捉え方」

つぎに部員のHさんは「人それぞれものの捉え方が違うこと」について気になっているところから、「みんなで同じものを見て、言語化し話す」ことをしました。見たものは「りんご」。1分間りんごを眺めて感じたことを書き出し、そのメモをもとにひとりずつ話します。「青森出身の知り合いのことを思い出した」「赤と黄緑が混ざった色に注目した」など、それぞれの視点を共有すると全く違う感想がでてきました。

ものの見方や、出来事に対してのそれぞれの感じ方など、「人それぞれものの捉え方が違うこと」は他者と共にいると必ず起こりうることです。「りんご」を見て、それぞれが自分の感じ方を素直に伝え、それを素直に受け取ってもらえた。そんな風に、さまざまな場面で、フラットに安心して「違い」を共有する場面がうまれると良いなと感じました。

ひとりひとりの「もやもやを安全に扱う技術」③
きき合うことでひろがる

この回を迎える前の準備期間に、部員たちが最近どんなことが気になったり「もやもや」しているか、どんなことをやってみようと考えているかなどをきき合う時間をもうけました。
部員Yさん「なにか手を動かしながら人とおしゃべりしたときに単に話していたときよりも深い話ができた経験があるので、手芸などをしながらおしゃべりしたい。あと短歌づくりなどもしてみたい。」
部員Tさん「倶楽部メンバーのことをもっと知りたい。倶楽部の時間では聞けなかった、それぞれの好きなものの話を聞きたい」
部員Sさん「倶楽部活動で得た体験を、日常の中でも思い出せるようなオブジェかなにかを作りたい」
など話をしながら、この3人のアイデアをコラボレーションできるのではないかと話が進みました。

結果的に、倶楽部メンバーそれぞれが好きなものを語りながら木材に色を塗り、その木材は短歌を綴ったカードを飾るカードスタンドになり、倶楽部活動が終わったあとも「ファンファンする感覚」を思い出せるオブジェを作ることになりました。

まずはそれぞれの「好きなもの」のイメージカラーを木材に塗ります。塗りながらひとりずつ、「好きなもの」について話します。ランダムに塗られながらどこか調和が取れています。

つぎに短歌づくり。ひとり3枚ほど「ファンファン」から連想する5音または7音の言葉をカードに書き、全員が書いたものを机に並べます。そこから好きな言葉のカードを選び、5・7・5・7・7に並べて詠み合いました。

部員のひとりが作成した短歌「わからない 日曜の朝 振り返り どんどん進む どこいくマグロ」。毎回日曜日の朝におこなわれたファンファン倶楽部。その時間はすぐにはわからない良い「もやもや」の残る時間でした。その時間を度々振り返り反芻しながら、立ち止まらずマグロのようにただ前に進んでいく、どこに行くかもわからない面白さが込められています。

木材を切り、カードを立ててカードスタンドが完成しました!日々のなかでこのカードスタンドを見て、「ファンファン倶楽部」での学びや時間を思い出してもらうきっかけになったらうれしいです。
ひとりでは大変かもしれないことも、信頼できる人たちと「もやもや」を共有することで、より豊かな表現に進化しました。

半年の活動を経て

全11回の活動を通じて「ファンファン倶楽部に参加してみてどうだったか」を倶楽部メンバーに伺い、以下のような感想をいただきました。

・自分のもやもやがすべて見事に解決した!というよりも、あ〜楽になった〜という感じ。みんなもやもや悩んでいることがあることを知れたのも良かったし、それを共有できる場所ができたことがうれしかった。
・もやもやが消えたわけではないけれど、前進につながったと思うし、いろんな考え方ができるようになれた。
・私はこれまで展覧会やギャラリーに行ったり、創られたものを見ることしかしてこなかった。見ることを通しての発見にのみ注力してきた。でもそれだけでいいのかなといつももやもやしていた。最近ははじめて創ることも面白いと思うようになり、自分でもびっくりしている。また普段だったら出会うことのない方とお友達になれたのも大きな収穫だった。

私自身もファンファンや『ファンファン倶楽部』に関わるはじめての年で、「もやもや」やファンファンの感覚を手繰り寄せていきました。部員たちと共にそれらの感覚を養っていけたのは、なにかイベントをつくるためといった目的的ではなく、毎月定期的に集まり、同じ作業をしたりおしゃべりをする時間を共に過ごしてたからだと感じます。みんなで「好きなもの」について話しながら、木材にペンキを塗る時間なんて、私にとっては普段なかなか起きないことです。

年齢や興味関心の異なるみなさんと、全11回の活動を通じて学んだ「遊び心」や「もやもやを安全に扱う技術」は、今後もファンファンの活動のなかで大事に携えていきたいものになりました。
ご参加いただいた8名の部員のみなさん、ゲストでお越しいただいたみなさん、ご協力いただいたみなさん。ありがとうございました!

執筆=宮﨑有里