「アーティスト・イン・レクリエーション」佐藤史治+原口寛子|興望館 お食事友の会の皆さんと「オリジナル四字熟語をつくろう!」実施レポート
ファンファンとは?
ファンファンで取り組んでいるプログラム「アーティスト・イン・レクリエーション」。アーティストと地域の福祉施設が連携し、様々な知見やアイディアを共有する勉強会を行いながら、レクリエーションを企画していく取り組みです。
今回のレポートでは、3回の勉強会を経てアーティストユニット佐藤史治と原口寛子のおふたりと行なったレクリエーション「オリジナル四字熟語をつくろう!」の当日の様子をお届けします!
墨田区にある興望館では、主にこども園と学童保育を行っていますが、月に2回、地域のお年寄りの交流の場として「お食事 友の会」(以下、友の会)を行っており、60代〜90代の方が集いお食事をしながらお話を楽しんだり、お食事後には歌を歌ったりしています。今回のレクリエーションは、2024年11月に「友の会」の皆さん25名と実施しました。
レクリエーションをする前に
佐藤さんと原口さんはこのレクリエーションの日までに3回ほど友の会に参加してコミュニケーションをとったり、本企画の一環で行なった勉強会をする中で「高齢者とか、墨田区在住とかという属性でくくるのではなく、個々人のこと、人となりみたいなことを少しでも引き出せる機会になるといい」と話していました。詳しくは第3回勉強会のレポートへ。
事前の打ち合わせで興望館職員の萱村さん、高橋さんともどのようなお題ならばそれぞれの人となりが見えてくるのかを相談し、四字熟語のテーマを「くらしで大事にしていること」としました。また、当日に急にお題を発表しても漢字やアイデアが思い浮かばないかもしれないということで、実施の2週間前にお題を発表し、使用するワークシートも配布しました。
興望館「お食事 友の会」の皆さんとやってみる
いよいよ、レクリエーション当日。まず、興望館の高橋さんから「今日はアーティスト・イン・レクリエーションということで、佐藤さん、原口さんとオリジナルの四字熟語を作りますよ。実は私もいくつか作ってみました。」と、導入のお話がありました。
高橋さんが作った四字熟語は、各席に配布された次第紙にありました。「秋は落ち葉がたくさん落ちるので、清掃をしています、『葉草清掃』。あと、体のために毎日お酒を飲むよりは一日おきに飲むようにしています、『隔日肝良』。それから、最近寒くなって綿布団から羽毛布団にしたら軽くなりました、『布団軽減』。皆さんもオリジナルの四字熟語で楽しみましょう。」
そして、佐藤さんからワークシートの使い方の説明や、四字熟語の例をお見せして、いよいよレクリエーションに入っていきます。ワークシートは、お題から思いついたエピソードを書き、そのエピソードの中にある漢字を4つを組み合わせると四字熟語を作れるように、佐藤さんと原口さんが作成しました。
ワークシートを配布すると、筆ペンを持ってサラサラと書き始める方、家で考えてきた四字熟語を書き写す方など、それぞれのペースで四字熟語を書きます。
もちろん、どうしようかと悩む方もいます。アーティストやファンファンのスタッフが「普段、どんなことを大切にしていますか?」と話しかけてみると、色々なエピソードを話してくださり、そこから一緒に四字熟語を作っていきました。
お隣の席の方とワークシートに書いた内容を見せあったり、職員に説明したりとコミュニケーションも楽しんでいる様子が印象的でした。どんどん新作を思いついてワークシートを複数提出した方もいました。
また、興望館の職員の方、本企画に勉強会からご参加いただいているオブザーバーの皆さんや、ファンファンのスタッフもレクリエーションに参加し、友の会の皆さんと交流しながら行いました。
お食事の時間
四字熟語を書き終えて、次はお食事の時間に。友の会の皆さんは、興望館の給食室で調理された美味しそうな昼食を食べていました。
その間、佐藤さんと原口さんは出来上がった四字熟語をひとつひとつ読んでいました。完成した四字熟語はなんと約40にもなりました!
出来上がった四字熟語の発表!
食事後、完成した四字熟語をスクリーンに映し出しながら、みんなで一つずつ眺めてみます。ワークシートに書いてあるペンネームを呼んでみると、はにかみながら手をあげてくださいます。
このレポートでは、完成した四字熟語のうちいくつかをご紹介します!
まずは、E.Fさんの四字熟語。会のはじめに紹介された、体を大切にしながらお酒を飲む興望館の高橋さんとは反対に、お酒を一番先に飲むことを楽しんでいるそうです。原口さんが「心の健康ですね!」と一言。素朴なイラストも魅力的です。
アイコさんの「愛事時金」。読むと心に刺さる四字熟語です。参加者の皆さんも関心していました。佐藤さんも「これは色紙とかに書いておきたいですね」と。
T.Sさんの「行話帰話」。どんな四字熟語なのか不思議に思ってエピソードを読むと、光景が思い浮かんできます。日常のエピソードが四字熟語になりました。
次は「他変自変」。どんな四字熟語なのか本人に聞いてみると「たまに妻と喧嘩になってしまうけど、相手(他人)を変えようと思ったら、まずは自分が変わらなければならない」とのこと。お隣の席の参加者とお喋りしながらできた四字熟語だそうです。お話を聞いてみて、家族との暮らしで大切にしていることを知ることができました。
最後はばあばさんです。実は、ばあばさんは出題からの2週間、家でコツコツといくつもの四字熟語を書いていました。そのうち1つがこの「高貴高礼」です。年を重ねる中で大切にしている心持ちが四字熟語になりました。
レクリエーションを終えて
こうして、興望館でのレクリエーションは終了。完成した四字熟語は「くらしで大事にしていること」に限らず、これから大事にしたいと思っていること、日常のエピソード、昔の思い出、自分自身を紹介するものなど様々でした。そのひとつひとつからそれぞれの考えや日々の様子、生き方が垣間見え、「四字熟語からそれぞれの人となりがわかるといい」と、実施前に話していたことがかたちになったように感じました。
7月に始まった勉強会や友の会の皆さんとの交流から丁寧に考案され、友の会の皆さん、興望館の職員の方々、アーティスト、ファンファンが共に楽しみながら互いを知るレクリエーションになりました。
これら四字熟語は、これから佐藤さんと原口さんが漢字ドリルとして冊子にし、完成したら興望館の学童保育に通う小学生に配布する予定です。また、子どもたちと一緒に四字熟語も作るのも楽しそうだと妄想が膨らんでいます。そうして同じ地域で暮らす異なる世代同士の四字熟語に共感したり面白がったりと、誰かとのコミュニケーションツールになっていくのではないかと期待しています。
佐藤史治と原口寛子
2011年に結成した2人組のアーティスト・ユニット。
2人というユニットを起点に、主に展示する場所や時間をモチーフ/素材とした映像、音、テキストなどを組み合わせたインスタレーションやパフォーマンス、プロジェクトを共同制作している。近年では、人や物を結び付けたり隔てたりする「あいだ」に着目し、それらを採集、編集など施した作品制作を行う。
執筆:磯野玲奈
撮影:コムラマイ
▼こちらもどうぞ
「アーティスト・イン・レクリエーション」上本竜平|隅田作業所 レクリエーション実施レポート
◾️本企画は「隅田川 森羅万象 墨に夢」(通称:すみゆめ)の一環として行なわれています。
すみゆめは、すみだ北斎美術館の開設を機に2016年から始まったアートプロジェクトです。葛飾北斎が90年の生涯を過ごした墨田区及び隅田川流域で、墨で描いた小さな夢をさまざまな人たちの手で色付けしていくように、芸術文化に限らず森羅万象あらゆる表現を行っている人たちがつながり、この地を賑やかに彩っていくことを目指しています。開催期間中は、まちなかや隅田川を舞台に主催企画やプロジェクト企画を行うとともに、すみゆめ参加者や関心のある人たちが集う「寄合」(毎月開催)で相互に学び、交流する場を創出していきます。またメイン期間の外にも、すみゆめの趣旨に賛同する企画を「すみゆめネットワーク企画」として広報連携するなど、一年を通して活動しています。