プラクティス

「超衆芸術スタンドプレー 夜明けから夜明けまで」を開催しました

2020年11月7日〜29日(金土日祝のみ)の期間、「ファンタジア!ファンタジア!ー生き方がかたちになったまちー」は6人組のアーティストのオル太を招聘し、展覧会「超衆芸術スタンドプレー 夜明けから夜明けまで」を開催しました。今回は、オル太がこれまでも行ってきた「超衆芸術スタンドプレー」シリーズ※の展示で、オル太にとって久しぶりの東京での個展となりました。

展覧会開催前の約1年前から、オル太は墨田周辺のリサーチを行っていました。リサーチで見えてきたのは、現在行われている”まちづくり”のようには”まち”をかたちづくることの無かった人々の声や語られてこなかった歴史、風景として残ることの無かった人々の生き方でした。オル太はそれらを丁寧に拾いあげ、映像インスタレーションを制作しました。(リサーチについては本レポート後半で!)

展覧会場となった元町工場の北條工務店となり(墨田区東向島)に、墨田ならではのモチーフが組み合わされた舞台セットが出現!!その中央のスクリーンに、リサーチで得た情報をもとに構成されたストーリーを、オル太や他出演者が再演した約70分間の映像が上映されました。また、会場の一角ではリサーチ資料の一部も展示されました。

※超衆芸術スタンドプレーは、滑稽かつ批判的な眼差しから日常を切り取り、都市における無意識の振る舞いを人・物になって自在に再現する試み。

元町工場に立ち上がった映像インスタレーションは圧巻!左側にはスマホ型スクリーンも。
写真撮影:縣健司
リサーチ資料の一部。インスタレーションのモデルとなったモチーフが解説されていました。
写真撮影:縣健司


撮影の様子

映像には、ファンファンの事務局メンバーも演者として参加。この映像は、事前に展示会場で撮影が行われました。

撮影の日、撮影用に組まれたセットは会場ぎりぎりにまで敷き詰められました。それ自体が展示じゃないかと思うくらいに豪華。銭湯や飲み屋を模したセットは、ただただ配置されているのではありません。セット自体が会場をぐるりとめぐるレールの上に乗せられていて可動式です。演者がセットの中心でセリフを読み上げるその様子をレールの外側からカメラが撮影している間、セットそのものがレールに沿って大きな音をたてながら移動します。まるで100年前の墨田の風景と現在の墨田の風景がぐるぐると混ざりあうよう。この舞台装置は、2020年2月にロームシアター京都で行われたオル太の公演『超衆芸術 スタンドプレー』の舞台装置の構造がベースになっています。京都から東京へ引き継がれた、本当に大掛かりなセットでした。

設営中の様子。円形のレールの上にセットがのっています。

そんな、空間を贅沢につかった撮影の後、展示そのものはどうなるんだろうかと思っていました。レールはそのままだろうか、セットの間を歩くような形になるんだろうか。初日に会場入りして驚きました。レールは形も無く片付けられ、セットは組み合わさってスクリーンを支える舞台へ変形。同じ場所とは思えないインスタレーションになっていたのでした。

中央のスクリーンに、レール上に乗った舞台セットを押している場面が映っています。
写真撮影:縣健司

リサーチ

作品制作にあたってのオル太のリサーチは、オンラインでの取材も含め、向島百花園や墨田聖書教会など様々な場所で行われました。何か明確な課題を前提にしたようなリサーチではありません。メンバー6名それぞれがそれぞれの興味や関心を元にふらふらと歩いて様々な事がらに出会うかのように進んでいきました。

オル太は2019年、ファンファンのレジデンスプログラムで墨田区京島のsheepstudioに1ヶ月間滞在しています。その時の生活で触れた墨田区の人々や風景や出来事も、今回の作品制作に影響を与えていたようです。(その際の発表として、ラーニング・ラボ#5が行われました。こちらの映像にてご覧いただけます。)

作品で触れていたテーマは墨田区内でも取り上げることが難しいとされていた内容です。しかしテーマそのものではなく、テーマと寄り添って生活を送る人々の声に触れるリサーチは、地元の方からも「(作品を)このような落とし所で表現してくれてありがとう」と言ってもらえる作品に結びつきました。

会期中の様子

コロナ禍で開催された本展覧会では来場者の方々に事前予約をしていただき、会場では検温と手の消毒にもご協力いただきました。また、会場内の定期的な換気、触れた場所の消毒も行いました。今、展覧会を無事に閉幕できてホッとしています。

会期中のほとんどの時間にオル太のメンバーが代わる代わる会場前に訪れ、作品を鑑賞し終えた方々とお話していました。作品についてや墨田のまちについてなど、みなさんが井戸端会議のようにお話しする様子が印象的でした。そうしていると、会場前を通りかかった近所の方々も展覧会に興味を持って話しかけてくださることもありました。

会場となった、北條工務店となり

事務局の感想

展示やリサーチの同行を通じて私自身も知らない墨田区の歴史を知ることができました。書籍から知ることもありましたが、人から聞いて知ることの方が多かった気がします。さらに、人から聞いて知ることができたのは歴史や事実そのものではなく、そのことに触れて私たちに話してくれたその人そのものだったのではないかとも感じます。まちを作るのは歴史や事実だけではなく、それと寄り添って生活している人々との出会いや対話からだということを再認識させられました。

最後に、来場者の方々が書いてくださったアンケートの一部をご紹介します。

●墨田区で大変意義深い活動をしている。下町や江戸情緒はこうした形で再構成されることで継承されると思う。(40代/男性/23区在住)

●これまで墨田区の歴史をここまで取り上げることができたアーティストはいなかったと思う。こうした歴史を取り上げてくれたことは地元住民としても嬉しい。(70代/男性/区内在住)

●時代を超えて語られるまちの姿にあらためて地域の姿を知った気がする。(40代/男性/区内在住)

●この地域の悲惨な歴史をも静かに表現しているところが印象に残った(70代/女性/区内在住)


開催概要

会期:11月7日(土)〜29日(日) ※金・土・日および23日(月・祝)のみ開場

時間:10:00〜19:00

会場:北條工務店となり(〒131-0032 東京都墨田区東向島3-22-10)

主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、一般社団法人うれしい予感

助成:すみだ文化芸術活動助成金

オル太

2009年に結成された、井上徹、川村和秀、斉藤隆文、長谷川義朗、メグ忍者、Jang-Chiによる6人組のアーティスト集団。これまでに、ゲームや祭りなど、特定の共同体において見られる集団的な行為とそこで繰り広げられるコミュニケーションに着目し、それらを再編・再演する作品を手がける。近年の主な活動に「超衆芸術スタンドプレー」(ロームシアター京都× 京都芸術センターU35 創造支援プログラム”KIPPU”、2020)、「青森EARTH2019:いのち耕す場所-農業がひらくアートの未来」(青森県立美術館、2019)、「Hybridizing Earth Discussing Multitude」(釡山ビエンナーレ、2016)など。第14回岡本太郎現代芸術賞にて岡本太郎賞受賞。

https://olta.jp



text by ヨネザワエリカ、磯野玲奈