【ファンファン倶楽部第4期】シーズン2- ①「サトウアヤコさんと、自分の『もやもや』探し」

【ファンファン倶楽部第4期】シーズン2- ①「サトウアヤコさんと、自分の『もやもや』探し」

ファンファン倶楽部

「安心して”もやもや”しよう」を合言葉に、ファンファンのコンセプトを共有するコミュニティ『ファンファン倶楽部』。第4期の今回は、約半年の活動期間を3つのシーズンにわけて徐々に「もやもやを安全に扱う技術」を探っていきます。シーズン1ではまちに繰り出して活動しましたが、シーズン2は「自分の『もやもや』探し」として自分自身の中を散歩します。

シーズン2のファンファン先輩はサトウアヤコさん

各シーズンの初回に「もやもやを安全に扱う技術」のヒントを持つ方を「ファンファン先輩」(ゲスト講師)としてお招きし、部員達は自分なりの「もやもやを安全に扱う技術」を考えていきます。

シーズン2のファンファン先輩はアーティストのサトウアヤコさんです。
サトウさんをお招きしたのは、2022年のはじめに、事務局の磯野がサトウさんのワークショップ「マイクロ・ストーリーズ」に参加したことがきっかけでした。ワークショップでは、ここ数年の出来事を振り返りながら、ストーリーを紡いでいく過程で思考の中をお散歩して、自分自身でも気がつかなかった自分の中でももやもやしたことと出来事が繋がっていくような感覚がありました。今回、自分の持つもやもやしたことを俯瞰的に見る手がかりになると感じ、ファンファン先輩をお願いしました。

このレポートではマイクロ・ストーリーズの手順と、サトウさんのワークショップメソッドについてお話いただいたことをお届けします。

ワークショップ「マイクロ・ストーリーズ」

ワークショップについて説明するサトウさん

「マイクロ・ストーリーズ」は、自分の経験したことを思い返して、その時に起きたことや考えたこと思ったことを拾い直し、無数の更新可能な小さなストーリーを見出すワークショップです。今回はファンファン倶楽部の活動時間に合わせたバージョンでやってみます。

①「年表シート」を書く
今回のワークショップではワークシートが数パターン集まったサトウさん特製のキットを使用します。まずはじめに、その中に入っている「年表シート」を書きます。

年表シートは横軸が1年間の時間軸、縦軸が上から「起きたこと」「当時思ったこと」「今思うこと、考えること」の順に並んでいます。
最初に「起きたこと」の欄に、直近2年間の出来事をカレンダーやSNSを見返しながら書き込んでいきます。
10分ほど経つと、サトウさんから部員達に
「次に上から2段目の欄にその出来事が合った時に感じたこと、一番下の欄にその出来事について今思うことを書いてみてください」と声かけがあり、さらに書き進めます。
部員たちは終始静かに、自分のことを振り返りながら年表を完成させていきます。

年表を黙々と書く部員達。
カレンダーやSNSの投稿を振り返りながら年表を書いている様子。

次に、年表シートを眺めながら、繋がっていると感じる事柄や自分の中で大きなトピックだったことのメモに透明な付箋を貼ります。それぞれ、色分けしたり、メモ書きをしたりしていきます。

付箋を使って年表を書き進める

マイクロ・ストーリーズ 手順②「エピソード・カード」を書く

年表を書き終えて改めて自分の活動を振り返ると、知らず知らずのうちに自分が興味を持って進めていたことや、別々の経験だと思っていたことが繋がり合っていたりと気づくことがあります。エピソードごとに簡単な文章にし、エピソード・カードに書きます。

エピソードカードを書く

マイクロ・ストーリーズ 手順③「エピソード・カード」を使って話す

いくつか書いたエピソード・カードの中から、他の部員達と共有してもよいと思うものを選んで、カードをもとにエピソードを一人ずつ話していきます。
手順②まではそれぞれがワークシートを書きながら静かな時間が流れていましたが、この時間はそれぞれの話に聞き入ったり、サトウさんや他の部員から質問したりと穏やかな時間が流れます。

サトウさんが考える「メソッド」と、そのはじめ方

ファンファン倶楽部に向けてサトウさんと事務局で打ち合わせをした際、サトウさんが感じていることや考えていることを他者と共有するために、これまでいくつもの「メソッド」を開発してきたお話を伺いました。
ファンファン倶楽部では個人の関心ごとや「もやもや」すると感じていることを自分なりに楽しく変換する方法を見つけることで、より豊かに生きることを目標にしています。サトウさんのメソッドを作る過程は、部員がこれからの倶楽部活動で探っていく「自分なりの方法」を考えるヒントになると思い、ここでサトウさんからメソッドについてお話していただきました。

「私は、まずはメソッドのざっくりとした枠組みを作り、やってみることと考えることを繰り返しながらアップデートしていきます。最初から完成度を高くするのは難しいので、プロトタイプを作ってやってみて、参加者にフィードバックをもらって更新する。そうして回数を重ねる中でメソッドができていきます。皆さんも、実践するなら『イベント』ではなく少人数の『会』を開くなど、まずは自分たちのためにやることから始めてみてください。」

サトウさんのお話を聞いて、「最初から完璧にワークショップを作るのではなくて、自分たちのためにやっていいんだ」と部員たちは少し安心し、この先の活動のヒントを得られた様子でした。

サトウさんと、ワークショップを楽しんだ部員達

サトウさんが行ってきたメソッドは、下記のwebサイトからご覧いただけます。
「カード・ダイアローグ」
「日常記憶地図」

次回は、サトウさんからいただいた宿題を元に行った「マイクロ・ストーリーズ」の続きをレポートします。

サトウアヤコ プロフィール
大阪生まれ。建築・情報工学を学び、対話やリサーチを主としたコンセプトデザインなどを行う。2010 年から「mogu book」、「カード・ダイアローグ」、「本棚旅行」、「日常記憶地図」など複数のプロジェクトを継続しながら、言語化や媒介的なコミュニケーションと「ひとりで、共に」在る場について探求している。主な展示に東京都現代美術館 MOTサテライト2019「ひろがる地図」(2019)、長野県立美術館「美術館のある街・記憶・風景「日常記憶地図」で見る50年」(2021)
https://my-lifemap.net/
https://dialogue.mogubook.net/

撮影:高田洋三
執筆:磯野玲奈(ファンファン事務局)