ラーニング・ラボ

#07 碓井ゆい×伊藤亜紗
手芸の在り処:手仕事から見る家庭と労働

新型コロナウイルスが引き起こした緊急事態宣言の最中、多くの人が家の中で楽しめることを求めたことで手芸用品の売り上げが伸びていたそうです。そして現在でもマスクを手作りする人は多いのではないでしょうか。マスクが必要不可欠であるということ以上に、人々が自ら何かを創作しようとする衝動には、人間との接触が難しくなる中で手芸の素材を通して手触りを求める欲望が隠れていたのかもしれません。家庭内で行われる身近なものづくりとも言える手芸は、1つ前のラーニングラボ#06で取り上げたセツルメント運動の中でも行われていました。創造的な行為である一方で、それは見方を変えると作り手のジェンダーによって美術や工芸からも隔てられた存在でもあります。手芸を用いた作品から女性が担っていた家事労働について多角的に考察される碓井ゆいさん、触覚の哲学とも言える『手の倫理』の著者であり、パリの工房で刺繍を学ばれたこともある伊藤亜紗さんをお招きし、手仕事という身近なものづくりが与える喜びと、そこに隠された家庭内における労働構造まで、お二人の実践的な経験を交えながらお話しを伺います。

<ゲスト>
碓井ゆい(アーティスト)
伊藤亜紗(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)

碓井ゆい

手芸の技法を中心に、布をはじめとした身近な素材を用いて平面・立体作品を制作する。ジェンダーの不均衡さを突いた《shadow of a coin》(2013-2018)や《shadow work》(2012-2016)では、近代化の過程で女性が担うようになった家事を「見えない」労働/影の部分として浮き彫りにする。社会・文化・歴史に対し、女性や労働の視点を中心に様々な角度から読み解いていくことで作品制作に取り組み、関係性や批評を生み出していくという表現活動を実践する。2018年VOCA賞受賞。

伊藤亜紗

東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター、リベラルアーツ研究教育院准教授。MIT客員研究員(2019)。専門は美学、現代アート。もともと生物学者を目指していたが、大学3年次より文転。2010年に東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻美学芸術学専門分野博士課程を単位取得のうえ退学。同年、博士号を取得(文学)。主な著作に『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社)、『どもる体』(医学書院)、『記憶する体』(春秋社)、『手の倫理』(講談社)。

日時:2020年12月15日(火)19:00~21:00
ゲスト:碓井ゆい、 伊藤亜紗